
目次
はじめに
眼科領域の自費診療は、患者自身が情報を集めて比較検討する時代に入りました。ICLやオルソケラトロジーといった自由診療は、仕組みや適応の複雑さ、高額な費用も相まって、患者の不安や誤解が生じやすい分野です。
一方、説明を担当するクリニック側も、診察やカウンセリングに多くの時間と労力を要し、スタッフ全員の知識水準を揃える難しさ、説明の標準化と効率化という課題に直面しています。
本記事では「患者の不安をあおる」のではなく、正確な理解と納得感を持ってもらうことを主眼に、クリニックがSNS動画を活用するポイントを整理します。筆者は視能訓練士として眼科に勤務し、現場で患者がどこで迷い、どんな疑問や不安を抱えるかを間近で見てきました。その経験を踏まえ、現実に役立つノウハウをかみ砕いて解説します。
なぜ今、眼科の自費診療に動画が必要なのか

自費診療ならではの3つの壁(高額・自分で選ぶ・情報の非対称)
- 治療費が高額なため、患者側の心理的ハードルが高い
- 自分にとって本当にベストな選択か、納得できるだけの情報が得られにくい
- 医療従事者と患者の間に知識格差があり、専門用語やリスクの説明も伝わりづらい
これらのハードルは、保険診療と比べて自費診療特有のものです。患者は「本当に必要な治療なのか」「リスクはどれくらいか」「費用はどの程度かかるのか」といった疑問を持ちやすくなります。
ICL・オルソケラトロジーが特に分かりにくい理由(仕組み・適応・他の選択肢との違い)
ICL(眼内コンタクトレンズ。正式には有水晶体眼内レンズ)やオルソケラトロジー(夜間装用型角膜矯正コンタクト)は、治療の仕組み自体が一般に浸透していません。
- 適応できる屈折異常の範囲や年齢、生活スタイルによる向き不向き
- レーシックなど他の選択肢との具体的な違い
- 術後の見え方やメンテナンスの実際
これらを紙のパンフレットや口頭説明だけで腑に落ちるまで伝え切るのは、現実には困難です。
患者の情報接点が検索からSNS・動画へ移っている
従来はGoogle検索でクリニックや治療法を調べる流れが主流でしたが、現在はInstagramやYouTube、ショート動画といったSNSが大きな役割を持ち始めています。
- 「#ICL」「#オルソケラトロジー」などのハッシュタグ検索
- 実際のイメージやプロセスが、動画で視覚的に分かることへの期待
- 気軽にコメントや質問ができるSNSならではの双方向性
この流れに合わせて、患者さんが治療内容を正しく理解し、相談前の不安を整理する手段として、動画の重要性が高まっています。
患者の意思決定プロセスと、動画の役割

認知 → 興味 → 比較検討 → 相談・予約 の4段階
患者が自費診療を選ぶまでには、大きく4つの段階があります。
- 認知:治療の存在を初めて知る
- 興味:自分の悩みや希望に合うか気になり始める
- 比較検討:他の治療法やクリニックと比較し、費用やリスクを調べる
- 相談・予約:最終的に医師に相談し、来院や施術予約に進む
この各段階ごとに、動画コンテンツで伝えるべき内容は異なります。
各段階で効く動画は異なる(生活の悩み起点/仕組み解説/費用と流れの考え方/来院後の不安軽減)
- 認知:日常の「メガネが煩わしい」「スポーツ中の不便」など、生活の悩みや課題をきっかけにした短尺動画
- 興味:ICLやオルソケラトロジーの基本的な仕組み、適応やメリット・限界を図解した解説動画
- 比較検討:治療の流れ、標準的な費用、リスク・副作用の考え方など、冷静な情報整理
- 相談・予約:来院後の流れや、よくある不安質問への事前回答
筆者の経験則:患者が診察室で実際につまずく質問
実務の現場では、次のようなやりとりが繰り返し発生します。
- 「ICLってどこにレンズを入れるの?」「元に戻せる?」
- 「オルソケラトロジーは何歳まで装用していい?」
- 「レーシックと何が違うの?」
- 「会社や学校で気づかれる?」「スポーツに影響は?」
こうした疑問は、医師やスタッフが丁寧に説明しても、口頭だけではイメージが湧きづらいことが多いものです。
ICL・オルソケラトロジーを動画で説明する設計(実例ベース)

ICLを説明する動画の構成例
- 冒頭:日常の悩み(「朝のコンタクト装用が面倒」「激しい運動でも裸眼で過ごしたい」等)
- 仕組み:イラストやCGで眼内レンズの挿入位置、元の水晶体との関係を図解
- 適応:どんな人が対象になるか、どんな人は向かないか
- 他の選択肢との比較:レーシック、通常のコンタクトレンズとの違いを表現
- 費用・流れ:手術の大まかな流れと、標準的な費用レンジ
- リスクとアフターケア:合併症や定期検診の必要性について
- 「詳細は必ず医師に相談」の文言で締める
▶実際の動画サンプル(Instagram)
オルソケラトロジーを説明する動画の構成例
- 冒頭:夜間装用で「朝、裸眼で過ごせる」生活イメージからスタート
- 仕組み:角膜形状を変える原理を、3Dアニメや模式図で視覚化
- 適応:小児・成人の境界、装用のルールや向かないケース
- メリット・限界:持続時間や生活上の注意点(「寝坊した日はどうなる?」等)
- 費用・流れ:初期費用、定期検診、レンズ交換時期の目安
- リスク:感染症や角膜障害への注意喚起
- 「疑問点は必ずクリニックにご相談を」と明示
▶実際の動画サンプル(Instagram)
治療名から始めないフック設計(生活の悩みスタート)
- 「朝、鏡を見るたびメガネが邪魔に感じる」
- 「子どもがスポーツを始めたので、裸眼で過ごせる方法を知りたい」
こうした生活のリアルな課題から入ることで、治療名を知らない層にも関心を持ってもらいやすくなります。実際の動画制作でも、冒頭10秒で「自分ごと化」できるフックを設計することが効果的です。
患者さんからよくある質問と、動画での答え方
ICL・オルソケラトロジーを扱う眼科クリニックのよくある質問ページで、実際に多く寄せられている質問です。動画では断定を避け、最後は必ず医師の診察に接続する形で扱います。
Q. ICLの手術は痛くないですか?
点眼の麻酔を用いるため、手術中の痛みはほとんど感じないと説明されることが一般的です。動画では流れと麻酔について落ち着いて触れ、「感じ方には個人差があるため、詳しくは医師にご相談ください」と結びます。
Q. ICLは将来、取り出して元に戻せますか?
ICLは角膜を削らずにレンズを挿入する治療のため、必要に応じてレンズを摘出できる場合があります。ただし、適応や術後の状態によって判断が異なります。動画では断定せず、「詳しくは医師の診察で確認を」と必ず添えます。
Q. ICL(レンズ)は何年くらいもちますか?交換は必要ですか?
長期間使用できると説明されることがありますが、目の状態によって判断は異なり、定期検診が前提になります。「交換不要」と断定せず、診察での確認が必要であることを伝える設計が安全です。
Q. オルソケラトロジーは何歳から、子どもでもできますか?
一般に10歳前後から検討されますが、レンズの着脱に保護者の補助が必要な場合があります。「対象になる年齢や条件は検査で判断します」と伝え、保護者の不安に寄り添う構成にします。
Q. 効果はいつから安定しますか?やめたら元に戻りますか?
始めた直後は効果の持続が短く、1〜2か月の継続使用で安定してくるとされます。装用をやめると角膜の形は徐々に元に戻ります。仕組みベースで説明し、過度な期待を与えない設計にします。
Q. オルソは近視の進行を抑えられますか?
近視の進行抑制を期待する声もありますが、効果には個人差があり、適応の判断は医師が行います。動画では断定せず、「気になる場合は医師にご相談を」に接続します。
Q. 費用はどのくらい?保険はききますか?
ICL・オルソとも自由診療で全額自己負担となります。動画では「自費診療であること」「標準的な費用の目安」に触れ、具体的な料金は自院HPへ誘導します。
医療広告ガイドラインを踏まえた動画設計【最重要】

SNS投稿が「広告」とみなされる条件(誘引性・特定性)
SNSやウェブ上の動画も、「特定の医療機関への受診を誘う(誘引性)」「医療機関や治療が特定できる(特定性)」を満たすと広告とみなされます(厚生労働省「医療広告ガイドライン」)。InstagramやTikTokなどの投稿も例外ではありません。
自費診療の動画で特に注意したい表現(体験談・ビフォーアフター・断言・最上級・効果保証)
- 体験談(「私はこれで良くなりました」等)の無条件掲載
- 必要な情報を伴わないビフォーアフター(術前術後)の見せ方
- 「必ず効果が出る」「どこよりも安全」といった最上級・断定表現
- 未承認の効果を保証する内容
これらは、必要な情報を伴わない場合や、誤認を招く場合に問題となりやすい表現です。特に自由診療は規制・監視が強まっているため、慎重な設計が求められます。
自由診療の「限定解除」4要件と、SNS動画での注意点
自由診療の詳細を掲載するには、以下の4要件すべてを満たす必要があります。 ・患者等が自ら求めて入手する情報(例:自身でクリニックHPを訪問) ・問い合わせ先等の明示 ・治療内容・標準的な費用等の明示 ・主なリスク・副作用等の明示
SNSやショート動画は「患者が自ら求めて入手する」とは言いにくいため、限定解除の前提を満たしにくい側面があります(厚生労働省「医療広告ガイドライン」参照)。
したがってSNS動画では、治療名・仕組み・適応・費用の目安・主なリスクといった情報を、動画内・説明文・公式HPの詳細ページでどのように補足するかを慎重に設計する必要があります。短尺だけで完結しにくい情報は、公式HPの詳細ページへ明確に誘導します。「詳細は医師にご相談ください」の一文は必要ですが、それだけで情報提供が十分になるとは限りません。体験談やビフォーアフターのように、限定解除の要件に依存する見せ方に頼らない構成のほうが安全です。
安全に届けるための言い換え・チェックリスト
- 「効果には個人差があります」「すべての方に適応するわけではありません」
- 「詳細は必ず医師にご相談ください」
- リスクや副作用についても、標準的な範囲で簡潔に触れる
- 費用や治療内容は「標準的な目安」で示し、自院の具体はHP等に誘導
- 使用する機器や治療内容によって確認事項が変わるため、未承認医薬品等に該当する場合は「国内未承認」である旨など必要な情報を明示する(承認状況は各医療機関が使用機器・治療内容に応じて確認)
これらを一つずつチェックしながら、動画構成・テロップ・説明文を設計することが、安心して情報を提供するために不可欠です。
競合と差がつく、患者目線の動画制作のポイント

短尺・一動画一テーマ・字幕前提
- 1本15〜60秒程度の短尺動画を基本とする
- 1動画で伝えるテーマを絞り、情報過多を避ける
- 音声が聞けない環境も想定し、全編に字幕・テロップを入れる
これにより、患者が迷わず必要な情報だけを受け取れる設計になります。
撮影に頼らない表現(解剖イメージ・図解・AI生成ビジュアル)
- 実際の手元や顔出しが難しい場合は、イラスト・CG・3Dアニメを活用
- 眼球断面やレンズの位置、角膜変化をAI生成画像や図解でわかりやすく
- 撮影素材がなくても、専門性を損なわずに伝わる動画を作成できる
院内・オンラインの導線設計(待合モニター・院内QR・プロフィールリンク・予約への接続)
- 院内モニターで待ち時間に流す(来院前後の不安軽減)
- パンフレットや受付にQRコードを設置し、動画へ誘導
- SNSプロフィールやHPに動画リンクを掲載し、詳細情報・予約への動線をつなぐ
複数の接点を設計することで、患者が「迷わない」導線を実現できます。
効果をどう測り、改善するか

見るべき指標(保存率・視聴維持率・プロフィール遷移・予約・指名来院)
- 動画の保存・いいね数
- どこまで視聴されたか(離脱ポイント)
- 動画からプロフィールやクリニックHPへの遷移数
- 動画視聴者からの予約・相談件数
- 「動画を見てきた」と言って来院された患者数
これらを定期的に記録・分析し、改善ポイントを洗い出します。
小さく作って改善するサイクル
- まずは1テーマ1本、短尺で作成
- 患者やスタッフからの反応・質問を集めてアップデート
- 動画の構成や表現方法を柔軟に見直し、PDCAを回す
現場スタッフが積極的にフィードバックを出し合う仕組みを作ると、着実に質が向上します。
内製か外注か:動画制作の進め方

内製のメリットと限界
- 現場のリアルな声や日々の疑問をすぐ動画化できる
- コストを抑えてスピーディに運用しやすい
- ただし、専門的な動画設計や医療広告ガイドライン対応が難しくなりがち
- クオリティや工数の限界で、続かなくなるケースも
外注パートナーの選び方(医療の理解・医療広告ガイドラインの知識)
- 眼科領域や自由診療に関する深い知識
- 厚生労働省「医療広告ガイドライン」への理解と、動画への具体的落とし込み
- 医療現場の実情を正確に汲み取れるヒアリング力
- 撮影以外の表現(CG・図解・AI画像)の提案力
これらを備えたパートナーを選ぶことで、安心して情報発信に取り組めます。
En Filmの取り組み(眼科専門/医療現場を知る視点/規制を踏まえた設計/撮影に頼らない制作)
En Filmは、眼科を専門に医療動画を制作しています。代表は視能訓練士・看護師として医療現場に携わった経験があり、患者さんがどこでつまずきやすいかを踏まえて構成します。医療広告ガイドラインを踏まえた設計を心がけています(法務監修を行うものではありません)。
- 眼科領域を理解した制作者がヒアリングを行い、現場で実際にあった疑問・課題をもとに設計
- 治療名から入らず「生活の悩み」起点で、患者の理解が進む構成
- 撮影が難しい場合も、解剖イメージ・図解・AI生成ビジュアルで、わかりやすく
- SNS・公式HP・院内モニター・QRコードまで含めた、視聴から相談までの導線設計や改善のご提案
一過性のPR動画ではなく、患者の誤解を減らし「納得して選べる」ための動画制作を支援しています。
制作・運用に関するよくある質問
Q1. 動画に患者さんの体験談やビフォーアフターは使えませんか?
体験談や術前術後(ビフォーアフター)の見せ方は、必要な情報を伴わない場合や誤認を招く場合に問題となりやすい表現です。SNS動画では特に「限定解除」の4要件を満たしにくいため、こうした表現に頼らず、仕組みや標準的な流れ・リスクに重点を置いた内容がおすすめです。
Q2. 動画で費用やリスクをどこまで説明すればいいですか?
標準的な費用レンジや主なリスク・副作用については、患者さんが納得して選択できるよう、動画内・説明文・公式HPなどで補足する設計が重要です。自院の詳細についてはHPや相談窓口へ誘導し、動画内では「詳細は医師にご相談ください」と明示しておくと安心です。
Q3. 院内で動画を流す場合も、広告ガイドラインは適用されますか?
院内の掲示物やモニターは、Web広告やSNSとは規制の扱いが異なる場合があります。ただし体験談や断定的な表現は避け、基本情報+リスク説明を意識するのが安全です。制作時にあらためてガイドラインを確認しましょう。
Q4. 動画制作を外注する場合、どれくらいの期間・コストが必要ですか?
内容や本数、表現方法(CG・図解・実写等)によって大きく異なります。En Filmでは、内容や目的をヒアリングしたうえで、必要な動画本数・表現方法・活用導線を整理し、ご提案しています。短尺動画1本からのご相談も可能です。
Q5. SNS動画から予約や相談につなげるにはどうすればいいですか?
動画内や説明文で「詳細・ご相談はHPまたはプロフィールのリンクから」と明示し、スムーズに遷移できる導線を整えます。院内QRやパンフレットとの併用も効果的です。患者が迷わず、安心して相談できる環境づくりが大切です。
まとめ
眼科クリニックの自費診療領域では、患者の不安や誤解を減らすための情報発信がますます重要になっています。ICLやオルソケラトロジーといった高度な治療ほど、仕組み・適応・リスクの丁寧な解説と、生活の中で「自分に合う選択肢を見つけられる」動画設計が求められます。
医療広告ガイドラインを踏まえつつ、短尺・一動画一テーマ・図解中心の動画を活用すれば、患者は迷わず正しく選択肢を理解できるようになります。En Filmでは、眼科を専門に、医療現場での経験を活かしながら、医療広告ガイドラインに配慮した動画制作をお手伝いしています。自費診療の説明動画やSNS活用でお悩みの場合は、まずはお気軽にご相談ください。
参考
- 厚生労働省「医療法における病院等の広告規制について」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/kokokukisei/index.html
- 厚生労働省「医療広告ガイドライン」 https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000927804.pdf
- 厚生労働省「医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書」 https://www.mhlw.go.jp/content/001439423.pdf
患者説明動画のご相談
En Filmは、眼科クリニック向けに、待合室モニター・Instagram・ホームページで使える患者説明ショート動画を制作しています。白内障・緑内障・ドライアイ・ICL・オルソケラトロジーなど、患者さんに伝わりにくい内容を、元・視能訓練士/元・看護師の視点で、AI映像で直感的にお伝えします。
ご相談はこちらをご覧ください(相談無料):https://enfilm.jp/clinic

